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ハワイで2月18日より「ハワイ・トリエンナーレ2022」が開幕した。「Pacific Century - E Ho'ommau no Moananuiākea」と題された今回のトリエンナーレでは、ハワイの歴史や土地の持つ環境をテーマとした作品を中心に展覧会が構成され、オオタファインアーツからは久門剛史と半田真規が参加。このパンデミックの中、現地に滞在して制作を行った久門剛史にインタビューを行った。
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アーティストインタビュー:久門剛史
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オ: 出展作品《Pause》(2022)と《Crossfades #1》(2015/2020)は共に時間と関係する作品だと思いますが、今回のハワイ・トリエンナーレにこれらを選んだ理由があれば教えてください。
久: アメリカでの発表が始めてなので、自分の代表作的かつ、伝わりやすい作品を選定したというのはありますが、そもそも《Pause》というタイトルをつけたインスタレーションは、自分が作家活動を始めるきっかけとなった出来事から来ています。2011年、日本では東日本大震災が起こり、それがきっかけで美術作家の活動にもう一度挑戦し、納得のいく人生を歩んでいこうと決断しました。中学生のときには阪神大震災も経験し、そういう大きな変化は人生でもう起こらないと思い込んでいましたが、今はコロナウィルスに直面し、再び現在地で足踏みしているような状況になりました。今回の作品は、今が決して完全停止ではない、一時停止した状態で、これまで絶対的だった様々なことを社会や生活の中で疑い、確かめながら、これからの人生について考えていこうとしている思考の世界を表現したいと思って制作しました。
《Crossfades #1》については、当初は「知覚の解像度を上げる」というコンセプトで始まりましたが、今という始まりから、どのように人生を拡げていけることができるかを示唆したいという考えがあります。
《Pause》も《Crossfades #1》もある種のタイムベースドの作品なので時間という共通点がありますが、別の視点で、そもそも永遠に続くであろう時間軸のなかで、唯一の人生をどう歩むかということは全人類に共通していて、何度か人生に大切な岐路がやってくる。その立ち止まるタイミングはとても貴重なんだということはどちらの作品でも表現したいと思っていることです。国外でもこの感覚が通用するのかということを確かめたいという思いもあって、これらの作品をハワイトリエンナーレで展開することにしました。
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オ: 今回のハワイ滞在を経て、新たに取り組んでみたい作品のアイディアがあれば教えてください。
久: 今後、コロナと人類がどういう関係を築いていくのかは未だ不明ですが、実際にその現場に赴いて、要素を拾い上げながら空間を創り上げるというのは難しくなってくる可能性もあります。そのスタイルは尊重しつつ、作品の根源的な部分を揺るがさないまま、他の手段も見つけていかないと作品を届けることができなくなるかもしれません。
映像作品を作ってこなかったのですが、映画のような作品は作ってみたいと思っています。空間を体験して、映画を一本見終わったような充実感のあるナラティブな作品の形態を考えたいと思っています。現実的には、長い回廊を歩く体験のようなことをイメージしています。今は立体や平面、人工的な光や風、音やプログラミングなど様々なメディアを使用しますが、さらにテキストや香り、湿度や温度など、それらを総動員して、心を揺さぶるような作品を制作したいと思っています。
先述した、他の手段を見つけていかないと、というのは、デジタル化された移動性が高いものというのではなく、血が流れているような手触りのある物質で、現代社会のスピード感に翻弄されず、鑑賞者の神経に確実に届くものを見つけたいということです。
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ハワイ・トリエンナーレ2022
展覧会名: Hawai‘i Triennal 2022: Pacific Century – E Ho‘omau no Moananuiākea
会期:2022年2月18日(金)~5月8日(日)
会場:ハワイ市内
トリエンナーレについての詳細は、こちらをご覧ください。
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久門は2022年夏、オオタファインアーツ東京にて個展を予定しております。
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About the Artist
1981年、京都府生まれ。2007年京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。人の営みを構成する根源的な感性や唯一性/永遠性に関心を寄せ、音や光、プログラミング、彫刻、絵画、大規模なインスタレーションなど多様な手法でコンセプチュアルな作品を発表している。作品を通じて鑑賞者の記憶や想像を共振させ、視覚や聴覚を研ぎ澄ますように促す。主な展覧会に「らせんの練習」豊田市美術館、愛知(2020年)、「58th Venice Biennale 2019」ヴェネチア、イタリア(2019年)「MAMプロジェクト025:久門剛史+アピチャッポン・ウィーラセタクン」森美術館、東京(2018年)、「アジア回廊 現代美術展」二条城、京都芸術センター(2017年)、「あいちトリエンナーレ2016」愛知県各地(2016年)など。チェルフィッチュの演劇作品「部屋に流れる時間の旅」では舞台美術と音声を担当。主な賞歴に、「メルセデス・ベンツ アート・スコープ2018-2020」(2018年)、「VOCA賞」(2016年)、「京都市芸術新人賞」(2016年)、「日産アートアワード2015 オーディエンス賞」(2015年)など。そのほか、文化庁「東アジア文化交流使」により中国へ派遣(2016年)。
作家の詳しい情報は、こちらより弊廊のホームページ をご覧ください。
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Available Works
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Tsuyoshi HisakadoA polite existence - Perfect Relations -, 2021Pencil, watercolor pencil on paper34 x 24.5 cm
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Tsuyoshi HisakadoPAUSE, 2021Pencil, watercolor pencil on paper34 x 24.5 cm
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Tsuyoshi HisakadoUntitled, 2021Acrylic, paper on wood panel60 x 216 x 6 cm
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Tsuyoshi HisakadoFork of Noise #2, 2021paper, brass, acrylic, movement, battery, wood, color paperH23 x 27.2 x 39.3 cm
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Tsuyoshi Hisakadocrossfades #4 / rain, 2020Silkscreen, ink on paper76.5 x 56 cm
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Tsuyoshi Hisakadocrossfades #4 / collapse xiv (confusion), 2020Silkscreen, ink on paper76.5 x 56 cm
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Tsuyoshi Hisakadocrossfades #4 / world viii (cue), 2020Silkscreen, ink on paper76.5 x 56 cm
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Tsuyoshi Hisakadocrossfades #4 / window (blossom), 2020Silkscreen, ink on paper76.5 x 56 cm
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