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「ケーキや靴を描きたいと思ったのは、
女性だからといってそれは描いてはいけないという考えに悔しさを覚えたからです」 - マリア・ファーラ
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2017年に修士課程を修了したファーラは、自身のペインティングにおいて東洋の絵画言語(漫画や習字)と西洋のそれ(油絵、麻の使用)を結びつけることで、評価を得てきました。色彩への鋭い感覚と躍動感のある構図によって、ファーラは日常生活からインスピレーションを得た情景や、またフィリピンの湖、ロンドンの街中にあるお店のショーウィンドーと結びついた記憶の断片を描き出します。そうして捉えられた瞬間は具体的であると同時に捉えがたくもあり、漂い、拡大を続ける世界への感覚を呼び起こします。
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マリア・ファーラ、Hydrangeas、2020年、麻に油彩、170 x 210 cm
本展のもうひとつの注目点は、「ブルンネラ」、「あじさい」、「ひまわり」とそれぞれ題されたガーデン・ペインティングのシリーズです。これらの作品において、ファーラは細かい筆遣いで、大自然の中の生き生きとした植物と様々なところに見られる有機体を描き出しました。自然の景色を探索する際に、「ボッティチェリの『春』や、ルーカス・クラナッハの『エデンの園』に現れる庭を見、幼いころの下関の家の庭を思い出した」と語っています。ファーラはラジオインタビューを聞いていた時に、このシリーズのインスピレーションを得ました。それはコロナ・ウイルスの症状から回復した男性が、回復の庭や病院の中庭について熱をもって語るもので、そこには花や草が溢れ、希望と平和の象徴となったのです。
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展示作品
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作家略歴
マリア・ファーラは、1988年フィリピン生まれ。2歳から15歳までを下関で過ごす。2012年に、ラスキン・スクール・オブ・アートより学士号を取得、また2016年ロンドン大学スレード美術学校にて修士課程を修了。主な個展に 「Too late to turn back now」オオタファインアーツ、 東京・シンガポール (2019)、「Eaves Deep」mother’s tankstation、ロンドン(2018)、「straits」mother’s tankstation、ダブリン(2017)、「Marine」Supplement Gallery、ロンドン(2016)。主なグループ展に、「Post Art Fair」 Ota Fine Arts、シンガポール(2020)、 「Xenia: Crossroads in Portrait Painting」Marianne Boesky Gallery – Chealsea、ニューヨーク(2020)、「Day Tripper」Focal Point Gallery, Southend-on-Sea、英国・エセックス (2019)、 「Ways of Seeing”, Waltham Forest London Borough of Culture 2019 and the Government Art Collection」ロンドン (2019)、「Present Progressive」オオタファインアーツ、東京(2019)、「The Horse」 Darren Knight Gallery、シドニー(2018)、「Hypnagogia」 Pippy Houldsworth Gallery、ロンドン(2018)、「Known Unknowns」Saatchi Gallery、ロンドン(2018)、「Pink Density」Clovis XV、ブリュッセル (2016)、 「Curious Struggle: Tim Patrick & Maria Farrar」 Arthouse1、ロンドン(2014)など。 ファーラの作品の主な収蔵先に、Saatchi Gallery Collection (ロンドン)、Magdalen College Library University of Oxford (ロンドン・オックスフォード)、AmC Collezione Coppola (イタリア・ベネチア)など。