A Day in the Life: クリス・ヒュン・シンカン
オオタファインアーツでは、香港出身のペインター、クリス・ヒュン・シンカンの日本では4年ぶりとなる個展を開催いたします。ビートルズの代表曲「A Day in the Life」を展覧会タイトルとする今展では、2021年に活動拠点を香港からイギリスに移して以降初めてとなる、室内を題材とした作品群を紹介いたします。
ヒュンは日常の出来事を観察し、主に家族や身の回りの風景をモチーフとしたペインティングを制作しています。写真やスケッチに頼らず、スタジオのキャンバスに向かいながら頭の中の記憶をたどってイメージを膨らませる工程により、時に複眼的な構図を作り出します。中国水墨画の影響から、抑えられた筆使いで表現される画面には、時に空白や曖昧さを残しながらも多くの要素が登場します。今回の新シリーズでは、一日の中で継続的に移り変わる室内に差し込む日の光が、ヒュンの主観を通して、それぞれのペインティングに独特の相異なる色彩を与えています。常に「見る」という行為を通じて人がどのように物事を理解するかに焦点を当ててきたクリスにとって、長年過ごした故郷を離れ、新しい家や家具に囲まれた新天地での生活は、制作に大きな影響を与えました。
躍動的なコンポジションに、新たな陽の光によって柔らかい広がりを持つようになった色面と、そのなかに溶けてしまいそうなモチーフというこれまでにないレイヤーが加わったヒュンの絵画を、どうぞお楽しみください。