The World Falls Apart Into Facts: サムソン・ヤン

Overview

オオタファインアーツでは、香港人アーティスト、サムソン・ヤンの個展『The World Falls Apart Into Facts』を開催いたします。サウンド、パフォーマンス、インスタレーションなど多様な作品を制作し、2017年の第57回ベネチア・ビエンナーレで香港代表にも選ばれているヤンは、今もっとも注目されるアジア作家のひとりです。

今展で展示される映像インスタレーション《The World Falls Apart Into Facts》(2019年)において、ヤンは歴史と政治の両観点から音楽にまつわるリサーチを行っています。それは、オペラ「トゥーランドット」の中でも歌われる中国を代表する民謡「Molihua(茉莉花)」の系譜をたどるというものです。清朝時代に大英帝国を通してヨーロッパにもたらされたこの歌は、その地で広まるなかで変化したものが中国に逆輸入されました。ヤンはその歴史と、雅楽のひとつである唐楽の伝播の歴史とを対比させます。中国から伝わった唐楽もまた、日本の宮廷音楽でありながら唐代の音楽を現在に伝えるという経緯を持つのです。映像のなかで、「Molihua」の原曲を演奏するために用いられる楽器には、観光地のお土産の楽器も含まれています。この作品を通してヤンは、ひとつの楽曲が複数の文化を横断するときに生ずる変化を検証し、他方がその曲をどのように受け取ったかについて考察します。それは、文化的な純度や正統性とは何かを問う試みとなっています。

綿密なリサーチとは対照的にユーモアにあふれた画面が楽しく魅力的なサムソン・ヤンの作品を、この機会にどうぞご覧ください。

 

協力:Edouard Malingue Gallery

Installation Views