草間彌生「自殺した私」 -1950年代から現在までのペーパー・ワーク60点-: 草間彌生
すみれ強迫
ある日 突然 わたしの声は
すみれの声になっているの
心しずめて 息をつめて
ほんとうなのね みんな
今日に おこったことたちは
テーブル掛けのすみれは抜け出し
這いあがって わたしの体に
一つ一つ へばりついては
バイオレット スミレのハナ
わたしの愛 奪いにやってくる
危険はみちみちてきたでしょうか
立ちすくんでしまう 香りなか
見て 天井や柱までもが
すみれ張りついている
青春はとらえがたく
すみれの花 語りかけないで
すみれ声になった声もどしてよ
大人になりたくないの まだ
たった もう一年だけでいいわ
わたしたちをそっとしておいてね