南隆雄: 南隆雄
岐阜IAMAS在学時から「るさんちまん」のメンバーとして活動を始め、ICC「ネクスト:メディアアートの新世代」や「横浜トリエンナーレ2005」などに出品しています。日常的な映像を題材にしながらもデジタル技術を映像の情報レベルで加工を施し、実際の展示空間に送り返します。絵画や彫刻と違って質量のないデジタル情報が、どこでどのように作品として成立するのかを知るうえで、興味深い試みです。また同時に、ハイテクおよびローテクな機材や日常品もそのままオブジェクトとして提示することも、技術とリアリティを考えるうえで挑戦的です。
今回の展示では、遠景に見える人と、拡大された宙に飛ぶ虫を合成し、それらのあいだで生まれるテンションがみずみずしい映像とともに、ありふれた言葉を加工した音響、さらにローテクな仕掛けによる映像に異化された空間も提示します。実態ではない音響や映像情報がどのように緊張感を持つ空間を仕立て上げるか興味はつきません。先にソウルで開催されたメディア・シティで顕著に現れたように、伝統的なメディア・アートの領域ではその進むべき方向やテーマが失われつつある反面、ハイテクが日常化した新世代による新たな試みがメディア・アートの領域を超えてこれまでにない表現が見られます。
古くから技術はアイディアと等価に、(あるいは共に)新しい作品を生み出してきました。