岡本七太郎による「ハチミツと極東と美術」: 小沢剛
尊敬する岡本太郎が亡くなった2年後の98年より、小沢剛は空想上の八人兄弟「岡本兄弟」を生み出しました。アーティストである一太郎から六太郎までは、社会的テーマを盛り込む者や、収集癖のある者、考古学をこよなく愛する者など、それぞれの個性を反映した美術作品で知られています。そうした兄たちの活動とは一線を画して、七太郎はいわゆる研究者的な性格の強い人物です。幼い頃より知人である小沢剛に連れられて、中国や韓国などのアジア諸国や日本各地を訪れた七太郎は、古い美術品を収集しながら、欧米の美術とは異なる視点を手に入れようと考えてきました。同様の考えは、日本美術史を再考しようという、小沢自身による「醤油画資料館」にも表れています。七太郎のデビューとなる本展は、経済的にも文化的にも無視することができなくなった近隣のアジアの人々と、どのような未来が築けるかを、もういちど美術や歴史を通して考えてみようという試みです。
出品作品は中国新石器時代や縄文中期の土器類から唐の副葬品、奈良時代の仏教美術をはじめ江戸期の絵画と歴史をたどります。岡本兄弟による醤油画の大作も出品され、美術館とはひと味違うアーティスティックな想像力を重視した展示となります。美術は国境を越えて時代を共有します。今後もこれまで以上に親密な関係を築いていかなければならない東アジアのこれからに捧げる展覧会となります。