イ・スギョン / 見附正康: イ・スギョン、見附正康
イは1963年にソウルで生まれ、現在もソウルで活動を続けています。自国の文化の記憶や現代人の共通感覚をもとに幅の広いコンセプチュアルな作品を展開するイですが、今回の展示では伝統的な陶磁器工房から集めた不完全な破片を再構成した立体と、辰砂と呼ばれるスティック状の鉱物で描かれた炎のドローイングを展示いたします。「Translated Vases」と呼ばれる陶磁器の作品は42点のグループで構成され、青白い蛍光灯の照明を浴びることで文化的な記憶や情緒的な感覚から距離をとり、今日的な造形物として存立させます。炎のようなドローイングに用いられる辰砂は、古くから広く仏教文化の中で用いられますが、イは長時間をかけオートマチックに情念を描くことで新しい領域を獲得しようと試みます。
彼女の作品は光州ビエンナーレやリバプールビエンナーレに出品され、作品は韓国国立現代美術館やアルコ財団(マドリッド)、越後妻有市などにコレクションされています。
見附正康は1975年石川県加賀市生まれ。現在も加賀市に在住し制作しています。石川県立九谷焼技術研修所を卒業後、福島武山に師事し九谷に伝わる赤絵の技術を取得しました。
酸化鉄で描かれる赤絵は南宋時代の中国に誕生した後に日本に伝播しましたが、伊万里や京都そして九谷でその装飾を発達させ現在に至ります。見附は、伝統的な赤絵の作風に従い人物や花鳥も描きますが、繊細な線描で描かれる独特の文様やパターンは特徴があり魅力的です。超絶的な技術はもちろんのこと、瓔珞(ようらく)や七宝文と呼ばれる古くから伝わる文様を部分部分で用いながら、これまでなかったような全体イメージを獲得することに成功しています。この傾向は中心を生かした大皿に描かれる作品にとりわけ顕著でひとつの到達点に達しているかのようです。
今回は新作の大皿4点を展示いたしますが、これまでの作品は石川県立美術館と石川県立九谷焼美術館に収蔵されています。