竹川宣彰 / 小池真奈美: 竹川宣彰 、小池真奈美
竹川宣彰
2008年にオオタファインアーツにて個展を開催した竹
川は、東京藝術大学油画科を卒業し、これまでにフラン
ス・リールでの「あきまへん」展や広島市現代美術館
「ポートレート・セッション」展で作品を発表していま
す。この度の展覧会では、新シリーズ≪波のドローイン
グ≫の大型油画作品や、世界地図から展開される一連の
インスタレーション、歴史を刻まれたサザエの貝殻など
これまでの竹川作品に共通して見られる時間の流れとそ
こに紡ぎだされる個人の歴史や概念が≪海≫に纏わるモ
チーフと共に浮かび上がります。
竹川によれば、『今、青く丸い地球のイメージは息苦し
い固定概念でしかない。その固定概念はネットやエコな
どによりますます強要されているようだ。地域の事情は
無視され対話はおざなりとなる。宇宙船の窓からスケッ
チをする場合をのぞけば、地球のイメージは人それぞれ
勝手に描けば良いと思う。私のスケッチはあえて断絶か
らスタートしている。』
もとは一枚の世界地図から『バラバラに孤立した』多数
の地球儀は空間に漂い、あたかも混沌とした現代の世界
観の中に『新たな関係をスタート』する希望を託してい
るようでもあります。
小池真奈美
小池が継続して制作している落語から着想を得たシリー
ズより、新作「時そば」「鰍沢(かじかざわ)」「おせ
つ」の3作品をご覧いただきます。
「時そば」は、煮込みそばの勘定を巡る勘定のごまかし
を目撃した男が、それにえらく感心し、自分も真似して
同じことをしようとするスリリングかつ滑稽な江戸落語。
「鰍沢」は道に迷った旅人が、宿を求めて訪ねた山中の
一軒家で、そこに住むかつて吉原の遊女だった美人に酒
に毒を盛られ、危うく殺され金を取られそうになるとこ
ろを危機一髪、窮地を脱する演目です。
スポンジを利用した手製の筆から描かれる登場人物はど
れも作家自身の顔を持ち、より表情豊かに活き活きと独
自の世界を生み出しています。