ラメンテーション: フィロズ・マハムド
2010年のあいちトリエンナーレに参加したバングラディシュ出身であるフィロズ・マハムドの初個展です。
本展は、バングラディシュの伝統的なステンシル技法「ラヤパ」を用いた絵画と数種の種で表面を覆った立体作品で構成されます。絵画は、伝統絵画に見られる争いと悲しみのイメージを描いており、彫刻はあいちトリエンナーレで発表した現代的な戦闘機の模型『Sucker wfp21』の縮小サイズの作品『Fat boys』を複数展示しています。
展覧会タイトルの「ラメンテーション」は、戦争や衝突がいろいろなレベルで人々に与える深い悲しみや喪失感を意味します。キャンバスに描かれる人物像たちはいずれも戦争の渦中に置かれますが、とくにプラッシーの戦の物語は、インド史において英仏列強の代理戦争として位置づけられていつの時代も国家に翻弄される民の生活が印象的です。
絵画作品は、17世紀ムガール帝国時代を舞台に繰り広げられたベンガル地方のナワーブ(太守)とイギリス東インド会社間の長い争い、プラッシーの戦を描いています。2点組で構成される作品は、相反する要素を表しています。止むことのない争いや王とお妃の愛情と悲しみ、また軍国主義と偏見という相互作用などを描き出しています。
また穀物で表面を覆われた 『Fat boys』は、戦時下における軍国主義と政府が対峙する市民との対立を示唆します。政府は莫大な予算を軍備に注ぎ込み、兵器や軍用戦闘機は国の財政と民の生活を疲弊させます。軍国主義はますます高慢になり、来たる有事へ備えるのが常です。古代より現在に至るまで戦争はあらゆる富を使い果たし、挙句に生命に関わる食糧までも奪い去る、この矛盾と悲しさは変わることはないとフィロズ・マハムドは考えます。