サスキア・オルドウォーバース
オオタファインアーツは3月19日より東京・シンガポール同時開催による「サスキア・オルドウォーバース」展にて2011年制作の≪Pareidolia≫を上映いたします。弊廊では2008年より2回目の個展です。
本作は、昨年ロンドン、Maureen Paleyにて上映され、アジアでは初公開です。
≪Pareidolia≫は、オイゲン・ヘリゲル(Eugen Herrigel)の『Zen in the Art of Archery(弓術における禅)』(1948年出版)に描かれる物語を基に作家が独自のモノローグを広げます。
ドイツ人哲学者のヘリゲルは1924年に哲学教師として来日、帰国後その体験を元に本書を出版し、日本文化の根源に仏教や禅の精神性を見出したことで知られています。物語はオイゲンが日本滞在中、日本文化研究のため弓術を始め、弓聖と称えられる阿波研造の下で得た経験を記したものです。術(テクニック)としての弓を否定し、道(精神修養)としての弓を探求する宗教的な素養があった阿波は弓禅一如の体現者とされ、精神を研ぎ澄ますと弓と的の距離は無くなり、「的を狙わずに中てる」ことが可能といいます。オイゲルは自身の前で阿波が暗闇の中、道場で二本の矢を放ち、一本は的中心に命中。二本目は一本目の矢筈を引き裂いたエピソードを記し、日本人と西洋人の概念の違いや禅の精神の理解に戸惑いながら、主観性や解釈、信念について問います。
精神医学用語で対象が実際とは違って知覚されることを指す「Pareidolia」をタイトルに、作品は師匠とドイツ人の弟子の間に立つ鳥の姿をした架空の通訳者の目線で語られ、その呪術的な語り口を通して鑑賞者に認識・感覚への意識を喚起します。
作品は、時間をかけて入念に制作された模型に計算された照明を施してスタジオで撮影されています。すべての模型は制作された人工物でありながら、語りかけるナレーションとともに虚と実と物語性が奇妙に入り混じる時空を構成します。
サスキア・オルドウォーバースは1971年オランダ生まれ。本展に続き、金沢21世紀美術館にて4月27日より始まる『内臓感覚-遠クテ近イ生ノ声』展に出展します。(2013年9月1日まで)
【作家の近年展覧会歴】
・主な個展
2011年 Kinemacolor、Museum Leuven、ベルギー、A Shot in the Dark、the Secession、ウィーン
2010年 個展、the Goetz Collection、ミュンヘン、the Art Gallery of York University、トロント
2008年 MAMプロジェクト007、森美術館、東京
・主なグループ展
2011年 Monanism、Museum of Old and New Art、タスマニア
The Cinema Effect: Illusion, Reality and the Moving Image、Hrshhorn、ワシントン
2009年 Automated Cities、San Diego Museum of Art、サンディエゴ
現在、ロンドン在住。