アジア散歩Ⅱ: ソン・ユアンユアン、リ・ラン、チン・チ、ジア・アイリ、イー・イラン、グ・ウェンダ、スン・シュン、 ワン・ドンリン、プラナカン陶器
リ・ラン Li Ran
チン・チ Qin Qi
ジア・アイリ Jia Aili
イー・イラン Yee I-Lann
グ・ウェンダ Gu Wenda
スン・シュン Sun Xun
ワン・ドンリン Wang Dong Ling
プラナカン陶器 Straight Chinese Ceramic
「アジア散歩 Ⅱ」は、昨夏に一回目を開催致したシリーズの二回目であり、今回は日本で未だ馴染みのない中国若手作家を中心に紹介いたします。
宋元元|ソン・ユアンユアン(Song Yuanyuan、1981年遼寧省生まれ)は、華北の魯迅美術学院で写真を学んだのち、遼寧省を拠点に絵を描きはじめました。そのため写真は彼の制作過程において大きな影響を持ちます。居住者が去ったあとの部屋が彼の最近の絵画の主な題材であり、そこには西洋趣味のデコラティブな家具が溢れ返っています。中国の多くの若手作家がそうであるように、伝統的なリアリズム絵画の手法を用いながら、より現代的な題材やコンセプトを取り扱います。
秦琦|チン・チ(Qin Qi、1975年山西省生まれ)は、魯迅美術学院油画専攻を卒業後、遼寧省を拠点に活動しています。本作《West Mountain》(2013年)では、北京郊外の風景を西洋のペインタリーな油画の手法で異化させています。
贾蔼力|ジア・アイリ(Jia Aili、1979年北京生まれ)は、魯迅美術学院油画専攻し卒業後各国で作品を発表しつづけ、近年ではシンガポール・アート・ミュージアムで個展を成功させました。現在最も注目される中国若手作家の一人である彼の作品は、今日の中国の公的な出来事ではなく個人的なムードを模索しながら、2000年以降の中国社会の劇的な変化を反映します。作家の描く、荒涼とした壮大な風景のなかに佇む孤独な人物画には、中国の急成長後の世代として古きよき伝統の喪失や文明の加速への不安を体現しながらも、どこか贖いや救済といった可能性への望みが込められています。
一方、中国華南でメディア・アートを学んだのち、ビデオやアニメを通じて新たな領域を模索する若手作家の作品もご紹介致します。
孙逊|スン・シュン(Sun Xun、1980年遼寧省生まれ)は、杭州の中央美術学院版画専攻を卒業後、北京に拠点を移し、ドローイングによる古典的な手法のアニメーションの制作を通じて、中国の新しい世代を代表する一人として活動してきました。本作は架空の映画のポスターを模したドローイングであり、政治批評の意味合も込められています。
李然|リ・ラン(Li Ran、1986年湖北省生まれ)は、重慶の四川美術学院油画専攻を卒業後、北京を拠点に人々の歴史認識に問いを投げかけるユーモラスなビデオ作品を制作してきました。作家本人によって演じられる本作は、戦争によって何もかも失った兵士の人生を描いた1959年のソヴィエトの短編映画「Destiny of a Man」のパロディです。その他、イー・イラン(Yee I-Lann、1971年マレーシア生まれ)は南オーストラリア大学で写真と映像学を専攻後、写真や映画、インスタレーションといった様々なメディアで活躍し、歴史や風景、記憶や文化的アイデンティティを視覚化する作品を多く発表するメディア・アーティストです。オーストラリアでのAPT3やテート・モダンなどのグループ展に参加し、活動の場を広げています。
さらに、国外を拠点に国際的に活躍する代表的なインク・ペインターの作品も展示致します。谷文達|グ・ウェンダ(Gu Wenda、1955年上海生まれ)は、中国を代表する現代アーティストであり、現在ニューヨークを拠点に活動しています。彼の作品の多くが中国の伝統的な書や詩を使用しており、本作《China Park -#3 Emperor》(2011年)に力強く書かれた文字は、「皇帝」を一文字にした造語です。
またグ・ウェンダと同じく中国で最も成功した現代書家の一人である王冬齡|ワン・ドンリン(Wang Dongling、1945年江蘇省生まれ)は、中央美術学院書画専攻を卒業後、同院で教鞭をふるってきました。本作品原題である張若虚の詩「春江花月夜」や、古典のみならずウォン・カ―ウェイ監督の映画タイトルや香港ポップの歌詞を作品化し、カリグラフィの現代的復興を目指します。