After Hours アフターアワーズ: 竹川宣彰
オオタファインアーツでは、竹川宣彰の2年半ぶりとなる個展を開催します。
竹川はこれまで、社会的・政治的問題をその渦中に自ら飛び込んで考察し、作品として具現化してきました。テーマは一見取っ付きにくいものもありますが、親しみやすいモチーフ、ユーモア溢れる作風で、誰もが楽しく読み解くことができる作品を平面、立体問わずに制作しています。近年は、原発やヘイトスピーチといったラディカルな問題においても、アートの枠を超えて積極的な活動を行っています。今展では、経済成長優先で置き去りにされ続け、現在にいたってゆがみが顕在化した様々な問題をテーマに制作したペインティングを発表します。
今展タイトル「アフターアワーズ」とは、クラブパーティーの夜明け以降、狂騒の余韻が残るなか人々がトーンダウンしながら過ごす時間を意味します。経済成長の夢から抜け出す人々、仕事のあとに街頭の抗議に参加する人々、様々な"アフター"のなかにいる人々を意識して作品を制作する竹川は、一部の知性がヒートアップしつつある現代社会において「アフターアワーズ」を提供する場と今展を位置付けます。人々が知性と怒りとをもって声を上げる様々な問題の根本についてしばしゆっくり考える。そのようなアフターの場を構えるのが竹川の狙いです。
今回竹川が作品のテーマを表現するために選んだのは、ペインティングというオーソドクスな手法です。ヘイトスピーチのような個別の問題を通して考えるテーマ、アジアを思考するなかで受け取ったテーマ、"経済史"のようなさらに大きなテーマ。竹川にとってペインティングは、関連しつつも規模の異なるテーマを同等に扱える土台として機能します。また今回初めて、ペインティングにデモのプラカードやストリート表現に用いるアクリル絵の具を使用することで、よりスピード感をもって問題の今日性を表現することを試みます。
これまでよりさらに鋭い批評眼と高い問題意識をもち、さらに真摯にアート表現を追求して臨む今展覧会は、竹川にとってメルクマールともなりうるものです。ぜひお見逃しなくご覧ください。
竹川宣彰は1977年東京生まれ。2002年に東京芸術大学油画科学部を卒業、同年にオオタファインアーツでの初個展を開催。近年は、2012年「リアル・ジャパネスク」展(国立国際美術館)、2013年「リヨンビエンナーレ」(フランス・リヨン市)等、国内外で数多くの展覧会に参加。9月19日よりスタートする「メッセージズ − 高橋コレクション」(十和田市現代美術館)にも参加いたします。