Biography

竹川宣彰の作品は、平面、立体、インスタレーションなど多岐に渡り、彼個人のアイデンティティや関心をベースにしながらも、同時に社会や政治の渦中にある問題を考察します。誰しもにあてはまるような包括的でシリアスな問題をテーマの軸としながらも、そのモチーフは、牛乳パックや虫歯など竹川ならではのセンスとユーモアに富んでおり、必ずしも美術の知識を問わない親しみやすいものとなっています。また一方で、「大航海時代」や「経済史」といった人類史や自然史に関わる大きな物語としての壮大な歴史性を背景に兼ね備えることで、作品の親しみやすさの中に現代の社会や政治に対する鋭い批判的態度が見え隠れしています。


竹川の表現スタイルは、彼の重要なモチーフのひとつである海や波のように流動的でありつつも、その根幹はペインティングなどのオーソドックスな手法についての地道な研究と、蝉や貝、ナマコといった生物の観察を通して得られる人間の外側の世界にある時間性への意識に支えられています。そこから生み出される独特の表現には、従来の人間中心的なアートヒストリーから離れ、伝統的な西洋美術の表現とアジア的な表現の新しい関係を構築しようとする竹川の試みを見出すことができます。


竹川の複眼的な視点と時間性を内包した物語を共有しながらも、鑑賞者はあたかも「地図」を読むようにして、作品を前に「自らの立ち位置」を考えられるような、そんな開放的な雰囲気も竹川の作品の魅力のひとつとなっています。

竹川宣彰は1977年東京都生まれ。2002年に東京藝術大学油絵科を卒業すると同年にオオタファインアーツで個展を開催します。「リアル・ジャパネスク:世界の中の日本現代美術」国立国際美術館、大阪(2012年)、「第12回リヨンビエンナーレ」リヨン現代美術館、フランス(2013年)、「あいちトリエンナーレ2016」愛知(2016年)、「Singapore Biennale 2016」Singapore Art Museum、シンガポール(2016年)、「The 9th Vladivostok International Biennale of Visual Arts」State Art Gallery of Primorsky region、ロシア(2017年)、「Roppongi Crossing 2019: Connexions」森美術館、東京(2019年)など。国内外で数多くの展覧会に参加しながら、デモなどの路上の活動にも加わることで、社会・歴史と個人の関係を問い直す新しい表現方法を、アートの枠を超えて常に模索しています。

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